指先からwas唇からlove【再公開】

あと10日ほどで中体連が始まる頃、体育館で選手達を激励する全校集会が開かれた。


……暑い。


体育館、蒸し風呂状態。

おまけに、一週間ほど前から引いた風邪が長引いて、咳を一生懸命止めていたらますます体は暑くなった。


「名前は順不同。呼ばれた生徒は一歩前へ出てて……」


校長が読み上げる名前の中に、海也の名前も、
一ノ瀬くんの名前もあった。



やっぱり、海也が呼ばれた時が一番ざわついていた。




「……緒先さん、大丈夫? 顔と首、すごい汗だよ?」

後ろに並んだ大西さんが、私の体の異変に気付いてくれた。


実を言うと、立ってるのがやっとで、


「……だ」



大丈夫……、


そう返そうとしたのに、突然、視界が真っ暗になった。




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