指先からwas唇からlove【再公開】
「……え?」


同じ匂いのする人?


それ、まさか……。





ーー海也……?




先生はタオルを私の顔に当てて、



「緒先さん、1人っきりなんかじゃないよ」



まだ止まらない涙をそっと拭いてくれる。




「あなたをここにおんぶして運んできてくれたのは、その同じ匂いのする人、
そして、あなたが落ちないように手を添えてきてくれたのは同じ組の川崎さんよ」


川崎……槇ちゃん?




″遥香ちゃんとは絶交だから″


……そういってたのに。




「だから、あんまり悩まないで、今はゆっくり寝てなさいね。飲み物足らなかったら冷蔵庫にもあるからね」



「は……い」


もしかしたら、仲直りできるかな?


自信ないけど、先生から借りたタオルがとてもいい匂いがして、それだけで幸せな気持ちになれて、

良いことが起こりそうな気さえする。




帰ったら、槇ちゃんに電話かけてみよう。

そして、

私の好きな人は1人だけだとちゃんと話そう。


そう決めたら、ますます喉が渇いちゃって……一気にドリンクを飲み干した。








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