指先からwas唇からlove【再公開】
足がすくんで、腰が抜けたようになって動けなかった。
……いつの間に海也が?
あっという間に人だかりができて、到着した救急車に運ばれていく海也と亜美ちゃんの姿はあまり見えなかった。
「遥香っ」
迎えに来たお母さんが駆け寄ってきても、しばらく動けなくて、
「……現場、目撃してたよね?」
警察の人が私を抱き起こしてくれて、やっと震える声で返事をした。
「……は……い」
警察が車の通行を制限し検証してる中に、
キラッと小さく光る石を見つける。
……私が海也に突き返したストラップだった。
海也、
まだ、持ってたんだ。
それを何とか拾って、お母さんに付き添われて警察の車に乗り込む。
警察に聞かれたことに、頷いたり返事をしたりしながら、本来お守りであったはずの石をギュッと握りしめた。
″海也とずっと一緒にいられますように″
まだ、子供の私が一方的に願ったこと、
それはもういいから、
叶わなくていいから、
どうか、
海也が無事でありますように。
それだけを願っていた。