指先からwas唇からlove【再公開】
クラスの男子が窓から外を見て、登校してきた海也に気が付いた。
私は、いてもたってもいられずに教室を飛び出した。
今日だけは、
今だけは……、
北川さんにも誰にも海也を目の前で奪われたくない。
人から噂されても構わないと思った。
「海也!」
玄関で靴を脱ぐ海也に声をかけた。
「……遥香」
とても驚いた顔をして私を見る。
「おはよう……良かった……学校に来れるようになって」
そして、嬉しいのか迷惑なのかわからない笑顔を浮かべている。
そんな顔されたら、私もどうしていいかわからないよ。
「……あーうん、今日から。ちょっと肩が上がらなくて不便だけど……」
良く見たら、海也の腕の動きが少しぎこちない。
なにか固定してるようにも見える。
「……骨折したの?」
「いや、そこまでは。でも元々、肩の状態は良くなかったから」
……あの事故の光景が頭を過る。
海也、亜美ちゃんを全身で守ってた。
相当、肩にも負担はあったはず。
「中体連……どうするの?」
一番気になってたこと。
「出るよ。絶対に」
予想通りの答えをする海也。
その目に迷いはなくて、私の心配なんて無用だと言われてるみたいだった。
「…そっか。…あの日、本当にありがと。保健室まで運んでくれて……」
ラインでも同じことを言ったけど。
「……何回も御礼言うなよ。体育のエロ教師が緒先を運ぼうとしてたから阻止しただけ」
″何回も″
……やっぱり、メッセージは見てたんだ。
返事をくれなかったのは、ケガのせい?
……それともーーー
「もう、俺、誰とも付き合わないって決めたんだ」
ーー私と関わりたくなかっただけなの?