指先からwas唇からlove【再公開】
「……じゃ、もう海也はこの学校には来ないの?」
急過ぎる……。
「新学期初日に挨拶には来るかもしれないし、……でも海也くんなら皆に何も言わないで行っちゃうのもあり得るかも」
亜美ちゃんの言うとおり、もう来ないつもりかもしれない。
何よりも悲しかったのは、それを本人の口から聞けなかったこと。
私は本当に、海也のなんでもなくなったんだなって。
……友達にもなれなかったんだなって……
それが寂しくてたまらなかった。
このまま、会えなくなっちゃうの?
淋しいのに、心臓はドクドクいっている。
「引っ越しの準備……大変だよね。怪我してるのに」
本当は叫んでしまいたいほどなのに、
亜美ちゃんの手前、冷静なふりをした。
「うん、大変みたいです、お母さんも先に出ていっちゃって…」
「………」
「最近の海也くん、全然元気ないです……」
だけど、
もう、それも限界かも。
泣く寸前。
「……私、塾だから……もう行くね」
急いで教室を出ていこうとした私を、
亜美ちゃんが後ろから抱き締めてきた。
ふわり……と亜美ちゃんの柔らかい髪の毛が私の腕を触れてきて……心地よかった。
「……緒先先輩、ごめんなさい」
亜美ちゃんの涙が背中に伝わってくるーーー
「先輩と……海也との大事な時間、奪っちゃって……ごめんな……さい……」
亜美ちゃんの後悔と素直さが伝わって、
……胸が痛くて、
ひたすら、首を横に振るしかなかった。