指先からwas唇からlove【再公開】
台所の小物は大体箱詰めが終わる。

「サンキュー、すげ手さばきだったな。引っ越しやさんになれんじゃね?」


海也は台所の隅に寄せて重なった段ボールを見て感心していた。


「あとは……どこをやってほしい?」


不思議だ。

こうやって作業してると、悲しみに浸る時間が減って気持ちが楽になる。


「……うん、母さんの部屋……かな」


「……じゃ、一緒にしよっか」


去られる方の気持ちになったことが無かった私は、動いていないとこの気持ちをどう
片付けていいのか分からない。



「海也くーん、喉かわいたー」


亜美ちゃんはリビングのクローゼットの中を片付けていたのだけど、


「うわ、なんだよ?!お前むしろ散らかしに来ただろ?!」


コミックや雑誌を読み始めたようで、全然進んでいなかった。



「だってこんなに暑いとだるくてやる気失せちゃう」

「クーラー効いてるだろ? 喉渇いたんなら 冷蔵庫のジュース飲んでろ」

「海也くんちのジュース、消費期限切れてそうだから家で飲んでくる」


「なんだと」


そう言うと亜美ちゃんは、さっさと玄関へと向かっていく。

「散らかすだけ散らかして戻って来ない気だろ?」

「どうかな? わかんなーい」


二人のやり取りを笑っていたら、亜美ちゃんと目が合った。



「……よ」

「ん?」「なに?」


何か言ったけど、聞き取れなかった。




「海也くん、最後だから、緒先先輩にエッチなことしていいよ」







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