指先からwas唇からlove【再公開】
「……高望み?」
海也は頷くと、開けていた窓を閉めて暮れていく空を眺め出した。
「俺、バカだから良い高校とか絶対無理だけど、中体連で優勝して全国大会に行けば どこか入れてくれる高校あるかもなって思ってた」
「……あー……」
それも、もう、できなくなったんだよね。
ふっと見た、夕陽を浴びる海也の横顔、刹那的だけど、とてもキレイ。
「それが、緒先と同じ高校だったらいいなって、勝手に思ってた。……厚かましくて黒い奴だろ? 俺」
「そんなことない。……嬉しい……嬉しいよ、でも……」
首を横に振る私の頬を、海也の手が包みこむ。
大きくて、熱い手。
キレイな指。
私を守ってくれた傷……。
ーー全部、愛しいのに、
「修学旅行の続き……していい?」
同じだった、実現することのない願いを聞いて
なおさら、別れてしまった未来が悲しく思えた。
「……うん……いいよ」