指先からwas唇からlove【再公開】
思えば、修学旅行……あの時が一番楽しかったな……。
秘密だったけど、夜中まで二人布団の中にいた。
寒い夜だったけど、海也の体温が心地よくて、
安心して寝ていられた。
私達は、一緒に、少しずつ大人になっていけるんだと思ってた。
「……遥香?」
あの時は、こんなに早く最後の日がくるなんて思ってなかった。
「…泣いてんの?」
「……ちょっとだけ……」
来るとしたら、ずっと先の、私の家の引っ越しのせいだと思ってたのに。
「……いや?」 「そうじゃない……」
まさか、海也がいなくなるなんて、想像もしてなかった。
「続き……と言っても、こんくらいしか出来ないけど……」
海也は、ギブスをしていない方の腕で私を抱き締めて、なぞるような、くすぐったいような優しいキスを繰り返す。
時々、私の涙が海也の鼻先や頬を濡らしてしまっても、それさえも優しく吸収してしまう。
長くて、心地よくて、
何度も足の力が抜けそうになった。
たった二ヶ月で、
海也はこんなに優しい、大人のキスをする男の子になっていた。
……私も、変わらなきゃ。
海也がいなくなっても、ちゃんと立っていられるような、
強い女の子に…………。