指先からwas唇からlove【再公開】
「……なんで?」
最後の最後に、拒絶する海也がわからない。
いつの間にか私の体を放した海也は、今まで見たことないくらいの悲しい顔をしていた。
「……こんな石ころ、遥香だなんて思えるわけないだろ?」
そして、持っていて欲しかったそれを、再び私の手中に戻して、入り口の方へと歩き出してしまった。
「海也……」
「俺、大分に行って進学できるかも怪しい奴なんだよ。
そんな俺が 遥香とまた会う約束なんてできないし、お互いにいつか心変わりしないとも限らないじゃん」
私の話を全部聞いていたはずなのに。
受け止めてくれたはずなのに、待たれることを拒んでいる。
「だから、あっちに行ったら、ラインも電話もしない、そんなので繋がっても虚しいだけだから」
「海也……」
冷たいーー……そんな風に思ったけど、
「俺が自力で会いに行けるようになって、そん時、また遥香がフリーなら、俺と会って欲しい」
見えない将来を約束しないのも、
海也の優しさだと思った。
「俺は遠距離恋愛なんて寂しいもので遥香を縛ったりしたくないから……」
舞い戻ってきたストラップをポケットに戻して、もうそれ以上すがったりはしなかった。
「…うん、…わかった……」
階段を降りていく海也の背中が、震えているように見えたから。
……悲しいのは、自分だけじゃない。
そして、
海也は、最後の最後に、
屋上の鍵をかけ忘れてしまっていた。
勿論、
私の心もーーーー