指先からwas唇からlove【再公開】
唇からlove
2019年 7月29日。

長崎県県立総合運動公園。

高校三年生になった私は、三年ぶりにこの競技場へ足を運ぶ。



県の陸上競技大会に比べて、来場者数が圧倒的に多いのは、この大会が全国大会だからだ。

なので、陸上好きの外国の観光客がチラホラといたりもする。


「Where is a tennis court?」

「Is Suenobu umiya an Olympic player?」


「え、ちょ、わかんない! 何いってんの?この外人?」

「テニスっていった?」



スタンドの最前列で、外国の観光客に話しかけられている槇ちゃん達を発見。


「あ、うそっ?!遥香ちゃん!?」


困っている槇ちゃん達に近づいて、


「There is a tennis court on the north side and Suenobu umiya isn't an Olympic player.」



代わりに質問に答えてみた。


Thank You、といいながらスタンドから消えていく観光客。




「遥香ちゃん、久しぶり! 相変わらず英語の発音すばらしかね! で、あの人なんて言ってたの?」


中学生レベルの英会話を誉められ、笑いつつ、



「″テニスコートはどこですか?

末信海也はオリンピック選手ですか?″って」



その内容に、照れ臭さを覚えた。




「え?! うみやって、あの転校した海也のこと言ってたの?」


「そう、彼の名前、よく ″うみや″ って間違えられるよね」







ーー末信海也。


彼は今日のこの全国大会の優勝候補だ。




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