指先からwas唇からlove【再公開】
「な、あの紺色のユニフォームが海也だよな?」
「なんかますますイケメンになっとらん?」
走行距離は少しだけ伸びたものの、
二段階スタートやスタートの位置等、三年前の中体連の3000㍍を彷彿さする種目だった。
パアーン!
と、胸の鼓動を止めるような音。
走り出した選手のなかで、飛び抜けて背の高い海也を目で追った。
「すげすげー」
「あいつ、もう二週目だぞ」
三年前に抱えていたケガ等の問題が全くない今の海也の走りは、他の選手が相手にならないほど速かった。
まるで出来レースなのではないかと思うほど、
あっさりと優勝してしまった海也。
「昔、緒先さんかけて、あいつとマラソン大会競ってた自分、消し去りたいわー」
一ノ瀬くんが懐かしいこと言うから、笑ってしまった。
「マジであいつ、スゲー奴だったんだな」
「……なぁ……?」
彼の言うとおり。
とても、遠い存在になってしまった。
当然だけど、昔のようにスタンドの私に気付くことはなかった。
「じゃ、成人式の時にでも同窓会やろーね」