指先からwas唇からlove【再公開】
すごい。
互角どころか、サッカー部の一ノ瀬くん達を抜いて、海也くんがトップを走っていた。
彼の走った後から、微かな汗と、海の匂いと
石鹸のような柔軟剤の匂いがした。
……いい匂い。
「あ、緒先だ」
「走ってる姿もカワイイ♪」
後に続く男子にからかわれて、一瞬、足が止まりそうになったけど……。
さっきスレ違った、海也くんの真剣な顔を思い出したら、それも恥ずかしいことのように思えた。
あの人、冬なのに、額に汗が光ってた。
良くわからないけど、海也くんみたいになりたいと思った。
気がついたら、
先頭グループのあとについて走っていた。
冬なのに、とても暑くて、
潮風が気持ち良くて、走りながら左手に広がる大村湾を見ていた。
キラキラして、夏の海みたいだと思った。