指先からwas唇からlove【再公開】

すごい。

互角どころか、サッカー部の一ノ瀬くん達を抜いて、海也くんがトップを走っていた。

彼の走った後から、微かな汗と、海の匂いと
石鹸のような柔軟剤の匂いがした。


……いい匂い。




「あ、緒先だ」

「走ってる姿もカワイイ♪」


後に続く男子にからかわれて、一瞬、足が止まりそうになったけど……。

さっきスレ違った、海也くんの真剣な顔を思い出したら、それも恥ずかしいことのように思えた。


あの人、冬なのに、額に汗が光ってた。


良くわからないけど、海也くんみたいになりたいと思った。




気がついたら、

先頭グループのあとについて走っていた。


冬なのに、とても暑くて、

潮風が気持ち良くて、走りながら左手に広がる大村湾を見ていた。

キラキラして、夏の海みたいだと思った。







< 33 / 287 >

この作品をシェア

pagetop