指先からwas唇からlove【再公開】

走り終わって学校のグラウンドに着くと、
一ノ瀬くんが話しかけてきた。


「緒先さん。か弱いイメージなのにしっかり走るんだね!まじギャップ萌え!」


「……ハァ……いや、いつも山道走ってたから……」


言いながら、海也くんの姿を探す。

……グラウンドのどこを探してもいない。

あんなにヒョロリとして目立つはずなのに、視野には飛び込んでこない。


彼は走りきったんだよね?



「一ノ瀬くん、……海也くんは?」


誤解される覚悟の上で、聞いてしまった。


「……海也……?」


また、顔を曇らせた一ノ瀬くんは、グラウンドから見える校舎のハシッコを指差して見せた。




「保健室にいるよ」













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