指先からwas唇からlove【再公開】
外の自販機でスポーツドリンクを買って、それを隠すように胸に抱き締める。


丁度、養護の先生が保健室から出てきて、


「あ、あの……」

怒られるのを覚悟で、様子を尋ねてみようと思ったのだけど、



「あ、末信くんなら、もう大丈夫よ」


にっこりと、言葉にする前に答えをもらってしまった。


今さらだけど、海也くんの名字、″末信″だったんだ。



先生は私が抱き締めるスポーツドリンクに視線を移しても、それには触れなかった。



「さっきまで、一年や二年の女子が様子を見に来てた。彼、ファン多いから大変ね」


え? 私もファンとかって、思われてる?



「あなた、転校生よね?」「は、はい」

養護の先生は、私のセーラー服を眺めて、ちょっと懐かしそうな表情に変わり、


「私の中学時代もそんなセーラー服だったの。
懐かしいなー、よくそれで神社とかでデートしてた」


「……そ、そうなんですか」



コミュニケーション力のない私は、また返事に困る始末。



「あなただけ特別。
三分だけ、お見舞いしていいよ」



「え? 特別?」


そんなのあり?





「あなた、彼と同じ匂いがするから」




「……匂い……」



海の匂い?



良くわからなかったけど、入れてくれた先生に感謝して、1人保健室に入った。











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