指先からwas唇からlove【再公開】
「それがいいかもね」
名残惜しさを感じつつ、一緒に保健室を出る。
こうやって間近で背中を見ると、やっぱり広いな、なんて思っていたら、
「その、ジュース、もしかして」
急に振り向くからビックリした。
「あ、うん、これ」
忘れてた。
海也くんに渡そうとしてたのに、ずっと抱えたままだったスポーツドリンク。
「なんか体温に近い温さになったけど、よかったらどうぞ」
今さらながら手渡す。
本当に間の悪い女だ。
「サンキュ。俺、あんまり冷たいの飲むと腹壊すからちょーどいいわ」
受け取って直ぐにキャップを開けて飲む姿も、
なんだか…すごく…。
「ん?」
「え」
また見とれていた私の目を、海也の目が捉えて、
「飲む?」
口をつけたペットボトルの先を私に向けるから、
「あ、いい!いい!大丈夫!全部飲み干しちゃって!」
キュッと心臓が弾けて、その場にいるのが苦しくなった。
「じゃあね、お大事にっ」
それから彼の顔を見ることもなく、駆け足で廊下を抜けていく。
自分から、
海也と同じ、微かな汗と、
磯の香りがして、なんだか不思議な気持ちになった。
なにこれ、
めっちゃ、ドキドキしてる。
さっき、ジュースを飲んでる姿見て、
それだけなのに、
色っぽいな、
って。