指先からwas唇からlove【再公開】
転校してきてから、一度も美味しく感じられないお弁当。
ここで誰かと楽しく昼休みを共有する、という日が来る気がしない。
今日は半分近く残して、私は歯磨きをするためにトイレへ行く。
「正直に言えって」
いつも、ほとんど人がいない昼休みのトイレ。
そこから荒々しい声が聞こえてきた。
女子の声だけど、凄みがある。
そして、
グスグスと鼻をすする声も。
誰か、泣いている……?
どうしよう。
歯磨き、今日は止めとこうかな?
スリッパに履き替えることもなく、そこから立ち去ろうとしたんだけど、
「泣いて誤魔化すんじゃないよ!
海也は誰の事好きなのかっ?!って聞いてるんだよっ!」
記憶に新しい声に、私の足は止まった。
ーー深雪先輩の声……。
そして、
足元に一組だけ脱がれてあった上履き。
それに青いマジック、書いてある名前が、
″生野 あみーご″。
亜美ちゃんが、泣いてるの?