指先からwas唇からlove【再公開】
まさか、女子トイレに海也本人が現れると思ってなかったのか、深雪先輩たちの狼狽え方は凄かった。


「へ、変態っ! 女子トイレに入ってくんじゃねーよっ!」

「チクるぞ!あっち行けっ」


必死に海也の進入を防ごうとしていた。




「海也くーん……痛いよぉ……」



だけど、亜美ちゃんのその弱々しい声を彼が聞き逃すはずがなく、



「生野?」



躊躇いを捨てて、中に入ってきてくれた。





「……なにしてんの? 凶器とか持って、お前ら、こわっ!」



口調とは違い、海也の目はとても鋭くなっていた。




「な、なんもしてないし。後輩の長い前髪切ってやろうとしただけやし」

「そーだよっ、なのに男子のくせにこんなところに入って来んな! エロ野郎!」


「コワイの海也じゃん!ただの覗きじゃんか!あっち行けよっ!何が見たいんだよっ!」



助けに来た海也を、必死に排除しようとする三年生、それでも、その勢いに負けることなく、



「……それ、こっちに渡せよ」



深雪先輩のハサミを取り上げようとする。




「そんなの女の顔に向けるなんて、お前ら女じゃないよ」












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