指先からwas唇からlove【再公開】
「海也くんっ!大丈夫っ?!」
私と亜美ちゃんが海也の方へ寄っていく間に、
深雪先輩たちは、マズイと思ったのか慌ててトイレから出ていってしまった。
「イテッ!マジくそだ、あのゴリラ!」
痛みで顔を歪める海也の指を見たら、皮膚の中身が見えそうなほど傷が深かった。
「先生呼んでくるっっ!」
「あ、生野っ、いくなっ!」
青ざめた亜美ちゃんも、トイレから出ていってしまって、
女子トイレの中で、海也と二人きりになってしまった。
「……今の、聞いた?」
「……え?」
持っていたハンカチで、取り敢えず止血に近い事をしてみる。
「″いくの、いくな、″ だって」
「………別にそんなおかしくないよ」
自分で言って吹き出す海也の指に、初めて触れた。
前から、綺麗だと思っていた指は、
思ったより男らしくて、
当たり前なんだけど、私の指より太さがあった。
その指が、今度は私のおでこに、そっと触れてきた。
「生野、守ってくれてありがと」