指先からwas唇からlove【再公開】
亜美ちゃんに聞いて、やって来た海也の自宅。
引っ越して間もなくて、慣れない土地でかなり時間かかった。
スマホがなければ、たどり着けなかったと思う。
ここだよね。
表札を確認。
ーー【末信】
立派な一軒家、うちの社宅とは大違い。
ピンポーン!
インターホンを鳴らしてドキドキして待つ。
お母さん出てきたらどうしよう。
やっぱり、亜美ちゃんに頼めば良かった。
「…………」
……シン……
あれ?
誰もいない?
おかしいな。
海也は、養護の先生に車で送って貰ったはずだけど。
鞄、玄関先に置いておいたらダメだろうか?
考えていると、
ガチャ……と、静かに玄関のドアが開いた。
きっと、お母さんだっ!
「こ、こんにちは! あの海也くんのクラスメートの緒先と……」
「俺だよ」
「あ」
頭を下げて挨拶した私に、笑いながら声をかけたのは、
海也だった。
「……なんだ、海也くんか」
「なんだってなんだ? 俺んちなんだから俺が出てきて当たり前だろ」
「そーだね、はい。鞄」
「流したな」
本人が出てきてホッとすると、任務も果たしたことだし、さっさと帰りたくなった。
でも、
「指は、どう?」
結果的には、私のせいで怪我をさせてしまって、鞄を届けただけでは済まされないような気がした。
「何か学校のことで出来ることあればお手伝いするよ。利き手みたいだし……」
それに、少しでも、何かを一緒に共有したい。
「一週間もすれば、普通に手動かしていいって。大したことないよ」
海也は、包帯の巻かれた指を私に見せて、そして、何か思い付いたのか……、
「そだ。取り敢えず、今だけ手伝って欲しいことがあるんだけど」
私を部屋へと招き入れた。