指先からwas唇からlove【再公開】
私は一人っ子で、家族でもこんな風に誰かの着替えの手伝いとかしてあげたことなかった。
だから、弟がいたらこんな感じだったのかな?
とか思ったり……。
「男の子の制服って、女子のよりしっかりした作りだよね」
「そうなんだ?」
「うん……セーラーのスナップとか直ぐに外れちゃうから」
学ランの袖が腕からすり落ちた瞬間、またそれから良い匂いがして、クラクラしそうだった。
「制服、袖……切れちゃったね。怒られるよね」
脱がせた学ランをソファーにそっと置く。
ハサミの刃で、切り裂かれた布地。
これは、もう、着ること出来ないかもしれない。
「あー……学ランなら他にもあるから大丈夫」
「予備?」
「いや、標準のやつ。さっきまで着てたのはちょっと短くしてるから」
……てことは、明日からは皆と同じの海也が見られるってことだよね?
次にシャツのボタンを外しながら、ちょっと想像して笑ってしまった。
「……なにニヤニヤしてんの?」
「べつに」
最後のボタンを外しきった瞬間、
「……え」
微かに感じていた甘い匂いに、全身包まれる。
「……ち、ちょ……」
海也に抱き締められてしまった。