指先からwas唇からlove【再公開】
「あれは、あの深雪って奴がウザかったから言っただけ」
「…………」
なんだ。
安心したような、残念なような……。
私、深雪先輩達の言うこと、やっぱり心の何処かで真に受けてたんだ。
「でも、本当にもう帰らないと、門限6時半なんだよ……」
こういうことする前に、気持ち、知りたい。
「……ん、あと5分……」
海也の腕に更に力が入る。
さっきと同じように、ううん、それよりも強く海也の皮膚を感じる。
温かい肌の匂い、
少し荒くなった呼吸、
耳元で感じて、ちょっと怖くなった。
「今日、……どうしたの?」
静かなリビングに、時間を知らせる近所のお寺の鐘だけが鳴り響いて、もうそろそろ帰らないと本当にマズイことが分かる。
「……あ、ちょっ」
そして、また、制服の中に海也の指が潜り込んで、何かを探すような動きをしているのに気がついた。
ーーわかった、
このひと、
ホック探してるんだ。