指先からwas唇からlove【再公開】
「緒先先輩、おはようございますっ」
登校途中、朝から元気な亜美ちゃんに声をかけられた。
あ……れ。
「海也くんは休み?」
いつも一緒の彼の姿がない。
「指まともに使えないし、ダルいから休むって。海也って元々あんまり学校行くタイプじゃなかったんですよー」
「あー……」
ヤンキーなんてそんなイメージだもん。
「けど、三学期になってからわりかし学校に行くようになったかな?」
「……へぇ」
普通、三学期の方が気持ちもダレそうなものだけど。
「緒先先輩が来てから、かもしれないです」
「……え」
無邪気な笑顔で、サラリと私をドキッとさせる。
「多分、そうです」
「……」
ダメ。また顔が火照ってきた。亜美ちゃんの前なのに。
必死に前髪を引っ張り顔を隠した。
そんな私の心情なんてお構いなしに、
「海也くんは、きっと緒先先輩のことが好きですよ」
周りの人目も憚らずに大きな声でそんなことを言ってのけた。
「……そんなこと、わかんないって」
同じ学校の女子の目が気になって、声も小さくなる。
そうだったら嬉しいし、
出来たら本人の口から聞きたいところ。
「わかりますよ、だって私ずっと海也のこと見てきたから」
「……ずっと?」
そんなにお互いの事わかってるなら、
……なら、教えてくれるかな?
前、一ノ瀬くんが言ってたこと。
「亜美ちゃん」
「はいっ?」
「海也くんて、小学校五年生の時なんかあったの?」
その頃まで、彼は真面目な生徒だったと言っていた。
「ーんーー……、小学校5年?
うちが4年でいじめられてた頃だよね、…あっ」
何か思い出したのか、亜美ちゃんは昔の事を少しだけ教えてくれた。
……″何でもきいて″
そういったのに、口を濁した一ノ瀬くんが教えてくれなかったことをーーー