指先からwas唇からlove【再公開】
亜美ちゃんと分かれて教室に入ると、珍しくクラスメート女子数人に話しかけられた。
「緒先さん、深雪先輩に顔を切られそうになったんだって?」
話がちょっと変わってしまってる。
「……そうじゃないんだけど」
結果、そうなっただけ。
「え、だってそのオデコの傷、そうなんでしょよ?」
「これは、たまたまハサミの刃が……」
「うわ、マジでハサミ振り回したんだ、あの女番長!」
「コワイよねー、補導されればいいのにね」
「補導されたらお先真っ暗じゃん」
「それ以前にあの人、受験しないらしーよ」
「マジで? あ、だからこの時期でもあの人、更正する様子がないわけね」
「あはは! 更正って!」
私の席の前で、もはや私に関係ない話ばかりが盛り上がっていた。
というか、この人たちが知りたいのは……、
「で、海也が助けに来てケガしちゃったんだよね? 指、ざっくり切れたの?」
やっぱり、彼の事ーー