指先からwas唇からlove【再公開】
三時間目は体育。
おそらくマラソンの練習。
もうクラスの誰にも顔を見られたくなくて、ひたすら下を向いて更衣室へ向かう。
「一ノ瀬くんが緒先の笛洗ってた」
「え、マジで洗わせてるの?」
「渡辺も一ノ瀬もカワイソー」
「緒先、ムカつくよね。泣いて男子の気ひいてんじゃねーよ」
先に歩いてる女子の声が聞こえて足は益々重たくなった。
「あいつ、深雪先輩に顔、切られたら良かったのに」
心は、もう切るところが無いくらい刻まれていた。
……私の居場所、この学校にも無いような気がする。