指先からwas唇からlove【再公開】
誰も来ないことを祈りながら、私が向かった先は、
ーー階段。
転校初日に海也に付いていって、行き着いた屋上。
そこに繋がる階段を、重たい足で上がる。
通常は施錠されているはずで、海也は針金でそれを開けてしまっていた。
海也が休みの今日、空いてるはずはないんだけど……。
「……あれ?」
南京錠が外されている。
一体、だれが?
先生?
どうしよう。
諦めて引き返して、走る?
「……」
だけど、もう始業ベルはなってしまった。
誰かいてもいい。
この泣いたあとの顔を笑われるのは嫌だ。
私は、ゆっくりと扉を開けた。