指先からwas唇からlove【再公開】
扉を開けると、冷たい風が顔を包み込む。
屋上全体を見回しても人影はなかった。
施錠忘れ? そんなことある?
扉を音を立てないように閉めて、屋上のハシッコへ向かって歩いていると、
「悪いやっちゃな、サボりか?」
上から聞き覚えのある声が……。
声がしたのは、出入りの上。
良く漫画やアニメでサボりの定番の場所となるあそこ。
「海也くん……」
そこに、今日休んでるはずの海也がいた。
「今からマラソンだろ? ここから緑のジャージの群れが外に歩いてるの見える」
「……え」
どうして、ここに?
「ここから良く見えるよ、上がれば?」
「……うん」
何だか離れて会話するのも変なので、扉の反対側にあるハシゴによじ登り、海也の近くへに行った。
「うわ、ここ、更に寒いんですけど」
強風がもろに当たって、踏ん張ってないと吹き飛ばされそう。
「座れよ、緒先のパンツ見たくて呼んだんじゃないんだから」
「……はい」
言われるまま、海也がそうしてるように学校で一番高い所でしゃがみこむ。
すると、緑のジャージのカタマりが学校を出て海辺に向かっているのが見えた。
「こうやって見たら、あいつら蟻んこみたいだよなぁ」