指先からwas唇からlove【再公開】

扉を開けると、冷たい風が顔を包み込む。

屋上全体を見回しても人影はなかった。


施錠忘れ? そんなことある?

扉を音を立てないように閉めて、屋上のハシッコへ向かって歩いていると、



「悪いやっちゃな、サボりか?」


上から聞き覚えのある声が……。


声がしたのは、出入りの上。


良く漫画やアニメでサボりの定番の場所となるあそこ。




「海也くん……」



そこに、今日休んでるはずの海也がいた。


「今からマラソンだろ? ここから緑のジャージの群れが外に歩いてるの見える」


「……え」



どうして、ここに?


「ここから良く見えるよ、上がれば?」


「……うん」

何だか離れて会話するのも変なので、扉の反対側にあるハシゴによじ登り、海也の近くへに行った。


「うわ、ここ、更に寒いんですけど」


強風がもろに当たって、踏ん張ってないと吹き飛ばされそう。



「座れよ、緒先のパンツ見たくて呼んだんじゃないんだから」


「……はい」



言われるまま、海也がそうしてるように学校で一番高い所でしゃがみこむ。


すると、緑のジャージのカタマりが学校を出て海辺に向かっているのが見えた。




「こうやって見たら、あいつら蟻んこみたいだよなぁ」







< 88 / 287 >

この作品をシェア

pagetop