指先からwas唇からlove【再公開】
蟻ん子……。
「……ふ」
「…ん?…なんだよ、今、笑った?」
海也が左の指で、そっと私の前髪に触れてきた。
隠せなくなった私の目が、海也の薄茶の潤んだ瞳と視線がぶつかって、思わず下を向いた。
「蟻ん子って言い方が可愛かったから」
「バカにすんなよ」
「バカにしてないよ」
「何でサボったの?」
……これも不意打ち。
「海也くんこそ、休んだくせになんで学校にいるの?」
いてくれて、嬉しかったんだけどね。
「一ノ瀬にも言ったけど、口うるさい親父が単身赴任から帰ってたんだ。今日は休みらしくて家にいるんだよ、一緒にいると息が詰まるからさ」
「……仲悪いの?」
「仲良くはないな、マジで広島から帰ってくんな!と思ったもん」
「……ふぅん」
それにしても、なんで学校に来たんだろう?
キライだからいつもサボってたんじゃないの?
たとえ、行く宛がなかったにしても、
「こんな寒いところよりも、家の方がいいと思うけど」
ここは、寂しくて、凍えてしまいそう。
「俺、別に学校がキライなわけじゃないんだよ」