指先からwas唇からlove【再公開】
隣の席の一ノ瀬くんは、相変わらずあれから私とは話さない。
そっけなく挨拶はしてくれるけど。
「一ノ瀬くん……」
「……おはよう」
授業以外は、席に着いてることが少なくなった。
そういえば、リコーダー、洗って机の中に入れておいてくれたのに、そのお礼も言えてないな。
「今日、学校静かじゃない?」
「三年が私立の受験で少ないからだよ」
「来年、うちらもそーなんだよねぇ」
「もー第一志望決めた?」
「S高かN高」
「そこ競争率今年二倍らしーよ」
「マジ」
周りで、私が分からない話が飛び交う。
好きな人と密かに気持ちは通じ合えたのに、
自分の居場所は、どことなく居心地悪い。