先輩は彼氏!?
次に意識がハッキリしたのはすぐの事だった。


「・・・んッ」


蒼空クンとキスしてるっ!?

数秒で離れた唇。


それでも、違和感のある口元に手をやる。


ドクンッ・・・―


ドクンッ・・・―

どうして?


あんなに優しかった蒼空クンは?


どこに行ったの?


「ッ・・・。しーちゃん・・・ゴメン。」


蒼空君はあたしをジッと見つめた。


哀しい瞳で。


「蒼空くん、ごめんね。」

蒼空くんは目を丸くした。


「アタシには柚矢しか居ないの。蒼空くんにはもっといい子がいっぱい居るよッ・・・!?」


蒼空くんはアタシを抱きしめた。


「無理・・・。俺にはしーチャンだけなの・・・。ずっと、ずっと、ずっと・・・。好きだった。」



ごめん、蒼空くん。


考えるのは。

想うのは。

愛しいのは。

大好きなのは。


「柚矢だけなの。」


トンっと蒼空くんの胸板を手で押した。

蒼空くんの腕は力が抜けて、首に回された手はスッと解かれた。


「しーちゃん、俺。いつでもいいから。寂しくなったら言って?」

「ぁりがとー・・・」


でも、蒼空くんにその言葉を言える日は来ないよ。
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