恋愛船〜jast two〜



「恋愛って、どうなるかわかんないよね。

片想いの覚悟をしていた秋くんが、いまはその片想いあいての花恋とつきあっているんだよ」


英麻のことばに、ほんとにそうだと思う。


すこしのズレで、ぜんぶがくずれる。


「ごめんね、ひとりでいたのに。それじゃああたしはもどるね」


そう言って、屋上の扉にむかってあるいていく英麻。


「あのさっ!」


どうしても、あとひとつきになっていたこと。


「花恋がわかれるときに俺に、バイト先の大学生が好きって言ってたんだけど……」


そのことばに、英麻はそっとほほ笑んで、首を横にふった。


「花恋はすっごく、斗真くんのことが好きだったよ」


それだけ言うと、英麻はまたあるきだす。


サビついた屋上の扉独特の音をききながら、英麻の姿がみえなくなるのをただただみつめる。


「はぁー……」


ため息ばっかでてくんじゃん……。


英麻にはさっきあぁ言ったけど、ほんとは、誤解を解いて花恋とやりなおしたい。


でも、あたまに秋の顔がチラついてできない。


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