パンプスとスニーカー
 「別れた」

 「お?」




 とたんに食欲がなくなって、カランとフォークを皿に転がす。


 ほとんど残してしまったが、これも一つのアピールになるだろう。


 見れば壮太のミックスグリルの皿もあまり減っていはいないから、味は推して知るべしというやつだ。




 「なんだよ、大人の魅力とかいってけっこう入れ込んでたじゃん?」

 「誰が入れ込んでたよ」

 「まあ、後腐れない関係ってやつだけど」




 基本、武尊と壮太はそこのスタンスは一致していた。


 ただ生真面目な女性陣には、似たようなタイプのちゃらんぽらん男だと同一視されて忌避される二人だったけれど、本当の意味で不特定多数、ただし互いに割り切れる相手としか付き合わない壮太に対して、武尊もわりに後腐れないタイプとの付き合いを好むもの一応は複数と同時並行で付き合うことはあまりない。


 だからこそ、むしろタチが悪いと壮太などは思うのだ。




 「もしかして、入れ込まれた?」




 さすがの武尊も周囲の目を気にして、テーブルに身を乗り出して声を落とす。




 「旦那と離婚するとか言われた」





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