パンプスとスニーカー
 それはそうだろう。


 武尊自身もわざわざその気のない女になど手を出さなくても、いくらでも女が寄ってくるだろうし、当然飢えているとも思えない。


 しかしだからと言って、だ。


 それなりに馴染んでいるにしても、まともに‘友達’として付き合い始めたのですら、昨日今日のことなのだ。




 「いや、でもさ。その…あたしがお世話になっていたら、えー、女の子の友達とか呼べないんじゃない?」




 恋人は…現在いないとは言っていたが、武尊なら今日明日にでも、彼がその気にさえなればすぐにでも作れるだろう。


 …声かけたらほとんど百中百発的なこと言ってたよね、たしか。


 見込みがありそうな女にしか声をかけないにしても、大学内にも彼をイイと思っている女の子がたくさんいるのはひまりも知っていた。


 実際に、こうして間近で接してみると、武尊がモテるというのもわかる気がする。


 …優しいし、気遣いだし、イケメンだし。


 見下しているように見えた態度も、人見知りだったのだと思えば誤解は簡単に氷解した。


 あと気になるのは女癖の悪さくらいなものかもしれなかったが、それは付き合う者同士の問題でひまりがどうこういう筋合いじゃない。




 「俺、家に女、連れ込まない主義だし」

 「そ、そうなの?」

 「だって、自分のテリトリーに面倒ごと引き込みたくないだろ?」





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