パンプスとスニーカー
 「う~ん」




 ひまりにとって、‘恋人’=誰よりも内側の人、というイメージで面倒という認識がよくわからなかった。


 実際に経験がないだけに夢見がちな自覚もないわけではなかったけれど、恋人とは誰よりも近い関係でいたい。




 「ダチも…まあ、壮太くらいで他のヤツ入れたことないけど、武藤さんならいいよ」

 「え~と」

 「他の友達の家を転々としてるより、ここって大学や図書館にも近いし、落ち着いてこれからの進退を考えたり準備できる。武藤さんにとってメリット、けっこうあるんじゃないの?」




 上手い話には裏がある…これが世の中の常識で、それが当たり前の法律家を目指している。


 が、武尊の顔はふざけているわけでもなく、かといって特に気負っているようでもなかった。


 ごく普通に、『一緒に昼飯食わない?』くらいな気軽さだ。


 …いや、でもさ。




 「俺も四六時中家にこもってるタイプじゃないし、かなり外泊も多いからかえって気楽だと思う」

 「うーん、だけど迷惑でしょ?…っていうか、タケちゃんのメリットがないじゃない」




 ズルッ。




 「それ、やめてくれない?」





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