パンプスとスニーカー
 「マジかよ?」

 「それさえなきゃ、寛容だし色気ってやつもあるし、同年代の女の子よりすげぇ付き合いやすかったんだけどな」

 「まあ、それは俺も思うかも」




 小さく笑って壮太も身を乗り出して、うんざりした顔の武尊と顔を付き合わせる。


 とたん、きゃあっと周囲から歓声が上がった。




 「黄色い声がすげぇけど」

 「お前知らないねぇのかよ?BLっていうの?最近、俺とお前で怪しいって噂があるんだってよ」

 「……BL」




 ボーイズラブ。


 知らないわけではなかったけれど、武尊にしてみれば、正直、「はあ?」ってなものだ。


 もともと興味のないものにはとことん興味がないタチではあるが、自分の手に届かない男を妄想に使うにしても、よりによって男同士でくっつけることの意味がわからない。


 壮太などは面白がって顔を近づけてくるが、勘弁しろよ、と仰け反って椅子に戻る。




 「いま、お前のその悪ふざけに乗る気分じゃねぇよ」

 「珍しいな?別れ話、そんなにヘビーだったわけ?」




 溜息をつかずにはいられない。




 「泣くわ、喚くわ…しまいには俺の子を妊娠したとか言い出すわ?」





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