パンプスとスニーカー
 …ひま。


 呼ぶよ、と宣言されていたというのに、いざ本当に呼ばれてしまうとやはり予想していた以上に面はゆい。




 「じゃ、話はこれで決まり。なんだかんだで、いい時間か。晩飯食いに行こうよ」

 「えっ!?」

 「結局一日、大学サボらせちゃったな。お詫びに、明日は車っで大学まで送るし、ついでに外食がてら預けてある車を取りに行こうか」

 「…え~っと」




 いつの間に、同居が確定してしまったのだろうか。


 それほど優柔不断なつもりはなかったひまりだったが、なぜかこの強引な姉弟にかかると、気が付けば…ということの連続だ。


 …すごいめちゃめちゃ、強引だよね?この人たち。


 まさに法曹界こそ、彼の天性の生きる場所だと体現している気さえする。


 逆に成績こそ良いがこの状況を見るに付け、自分の法学家としての適性をここに来てひまりは疑わずにはいられなかった。


 …いやいやいやいや。


 ブンブンと首を振り、つい弱気になってしまいそうな自分を鼓舞する。


 これもそれも、住むところもなくなってしまった不安からくるものに違いない。




 「た、武尊…」




 ぴんぽ~ん。


 本日、二回目の呼び鈴だ。


 …え?まさか。


 見上げた武尊の顔も同じことを考えているのが分かる。




 「…まさか、ねぇだろ」




 そう言って玄関に向かった武尊の後を、思わずひまりも追いかけた。




 インターフォンの画像に映ったのは―――。




 「お届けで~す」




 にっこり笑った、爽やかな佐●男子?




*****






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