パンプスとスニーカー
 いかにも優等生的な発言だ。


 しかも、思い決めれば決断が早い。


 さすがに頑固親父に逆らってまで、苦労して自分の道をゆく女だ。


 躊躇する武尊をさっさと置き去りにして、騒動の方向へともうひまりは歩き出してしまっている。


 …マジかよ。


 しかし、たしかにひまりの言うとおり、車を取りに戻るには対岸に渡るしかなく、大回りすれば歩道橋を通らずとも行くことは可能だが、その行動の是非をひまりに問われることになるだろう。




 「早く!武尊」




 やはり、武尊だけトンズラするというわけには行きそうにもなかった。




*****




 「大丈夫?」




 心配そうなひまりをよそに、武尊の方はぐったり。


 腰掛けたガードレールで、頭を足の間に挟み込むようにして項垂れたまま、返事をする気力も沸かなかった。


 胃の中はムカムカ、周囲の喧騒もどこかまだ遠く、ジワッと頭を締め付けられるような感覚に小さく呻く。


 …めっちゃ、カッコわりぃ。





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