パンプスとスニーカー
 「それがさ…」




 たしかにひまりは見た目、化粧っけがなくいつもすっぴんに近いこともあって、年より若く見えがちだ。


 しっかりしているようで、うっかりな一面もある。


 容姿的にも十人並みだが、あえて言えば可愛いタイプ。


 しかし、4人兄弟の真ん中、二人の弟がいるせいか、そんな外見に反してかなり落ち着いた性格で、生真面目でけっこう世話焼きな女だった。




 「へぇ、飯作ってくれてるんだ?」

 「居候代だっつーて、大学やバイトの合間を見て家事もやってくれてる」

 「お前んとこって、週3でハウスキーパー雇ってなかったっけ?」

 「掃除と洗濯はな。だから、その合間を縫って感じで、出来る範囲でだけどさ」




 そうでなくてもバイトに勉学にと忙しいのだ。


 フルで頑張られては本末店頭、かえってひまりの学業成績にも響きかねない。




 「兄嫁が家に入るまで主婦やってたってだけあって、飯、すげぇ美味い」

 「…なるほど」




 洋風な外見に反して、祖母の影響で武尊はかなり和食党だ。


 世間の男どもの例に洩れず、カレーやハンバーグも好きだが、茶色系の料理、肉ジャガやきんぴらなどには本当にヤられてしまう。


 ただ一人暮らしで外食がメインという生活なだけに、そうした食習慣とも最近ではご無沙汰していたが、ひまりの作る料理は武尊が子供の頃から馴染んでいる祖母の手料理に近かった。




 「彼女元々性格いいし、妹的な外見に姉的な性格でギャップ萌えでヤられたところに、さらに胃袋までガッツリ掴まれて見事KOされちゃったってわけね」





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