パンプスとスニーカー
 「ま、そういうことか?」




 自分でも自覚がある。




 「しょせん男なんて大なり小なりマザコンの気があるもんだけど、お前なんて特に!だもんな」

 「うるせぇよ」




 悪態で返しつつも、まんざらではない様子だ。


 長い付き合いの壮太でさえも初めて見る武尊の顔。


 …いい顔してんじゃん。


 他人事ながら、嬉しくなってくる。




 「ただ、お前もわかってると思うけど、彼女、遊べないタイプだぜ」

 「わかってるさ」




 もちろん、武尊だとて最初からわかってた。


 これまで何度となく女に失敗して、揉め事を起こしてきた彼だったが、最初から罪なマネをしようと思っていたわけではなかった。


 遊べないタイプだとわかっていて、弄んだことなどない。


 ただ…女を見る目がなかった。


 それに尽きるのかもしれない、壮太などに言わせるなら。




 「マジなんだ?」

 「マジだよ」

 「で、武藤さんはどうなのよ?」

 「うーん」




 それが問題だった。


 ‘友達’にはなれたと思う。


 が…、さりげない武尊のモーションにイマイチな反応なのだ。


 …嫌われてはいねぇよな。


 むしろ好かれていると思うのは、自惚れではないはずなのに。




 「告白したわけ?」

 「いや、それはまだ」




 意外な返答に、壮太が首を傾げる。




 「なんだよ、らしくねぇじゃん」





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