パンプスとスニーカー
 「今は時期が悪い」

 「ああ、なるほど」




 壮太も武尊や美紀からある程度のひまりの事情は聞いていた。


 いわば今のひまりは、家なき子だ。


 武尊ではなくても、それなりに居候できる友人はいるだろう。


 そうだとしても、今彼女に迫ることは弱味に漬け込むことになるし、万が一それで気まずくなりでもして、出て行かれたら目も当てられない。


 ひまりも困るだろうが、普通にフられるより修復が難しくなる可能性大だ。


 一度や二度、フられたところでへこたれるほど武尊も繊細なタチではない。


 それでも恋愛にもそれなりに戦略が必要だというのが、彼の持論だった。


 壮太も同意見。


 せめて、ひまりの自活の目処が立って、彼に弱味を感じずにすむ立場にならなければ逆に成るものも成りはしないだろう。




 「はぁ~~~~」




 つい両手で頭を抱えこむ武尊を横目に、壮太がにやりと笑う。




 「悩め、悩め、青少年。これまで真剣な恋愛してこなかったツケだ」

 「…お前に言われたくねぇよ」




*****





< 156 / 262 >

この作品をシェア

pagetop