パンプスとスニーカー
 「あ…うん」




 ドギマギしてしまう。


 内緒だと言われたわけではなかったけれど、やはりひまり的にもおいそれと武尊の部屋に間借りしているとは美紀にもいいかね、誰にもまだ言っていなかった。


 が、




 「もしかしなくても、北条君のとこにいたりするんだ?」

 「うっ」




 何を言わんや、だが何かを言わなければならない気がして、目を白黒させては言葉に詰まっているひまりを見て、美紀が微妙~な顔で苦笑する。




 「別に返事しなくていいよ、もうその態度が物語ってるしね」

 「あのさ、あのね…」




 何をどう説明すればいいのやら。




 「まさか生真面目な武藤ッチが、ああいう男の毒牙にかかるなんて思わなかったから、ちょっと複雑」




 言葉に迷ってマゴマゴしていたら、どうやら美紀にとんでもない誤解をされてしまったようで、ひまりがギョッと慌てて否定する。




 「ち、ち、違う、違う。それ誤解だから」

 「北条君のとこにいるわけじゃないの?」




 嘘はつきたくないが、かといって肯定するわけにもいかず困ってしまう。


 そんなひまりを見かねたのか、美紀の方があっさりと追求の手を緩めてくれた。




 「まあ、いい大人のことだし、武藤ッチの自由だけどさ」




 しかしそうは言うものの、美紀の顔は彼女自身が言うようになんとも複雑なもので、そこにはひまりへの心配がある。


 …むらちゃん。





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