パンプスとスニーカー
 「やめろよ」




 壮太が顔を顰める。




 「あいつはフリでも引き受けないだろうし、お前や俺がちょっかいかけていいような種類の女じゃねぇよ」



 思いのほか、壮太の顔は真剣だ。

 いつものチャラけて、からかうような表情ではない。




 「だいたい、後腐れある女と妙に期待させるような付き合いすっから、そういうことになるんだろ?」




 さすがの壮太も幼馴染みを武尊の毒牙に欠ける気にはなれないのか。

 それとも―――、




 「ニヤニヤすんの、やめろ」

 「お前もいい加減、素直になったら?」




 ずっと高校時代から感じていたことだ。


 が、




 「俺のことはほっとけ。お前は自分の尻のハエを追ってろよ」




 冷たくビシッと言われ、もっともだとまた溜息が出る。




 「どちらにせよ、面倒になる前に話はキッチリつけておいたほうがいいぜ。身から出た錆なんだからよ」

 「…だな」

 「生半可な女を引き合いに出して切れようとしても、逆上されるだけなんじゃねぇの?いっそ、マジの女作れば?」




 自分こそちゃらんぽらんな付き合いしかしてない壮太に言われるのも片腹痛いが、武尊にしても、ここのところ実のない付き合いに面倒がついてまわるばかりで、あまり楽しさも感じていないのも確かだ。


 とはいえ、




 「…それこそ、面倒くさ」




 その一言につきた。




*****





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