パンプスとスニーカー
 遊びで誰かと付き合ったりするもなにも、まったくの恋愛初心者。


 と、いうか、


 …誰かと付き合うとか、恋人になるとか、今のあたしは自分のことで一杯一杯だもん。


 当座、武尊のマンションに居候させてもらって、衣食住のほとんどを厄介になってしまっているが、いつまでも武尊やその家族たちに甘えているわけにもいかない。


 だから、まずはそんな状況からなんとか自立すること。


 そして、自立してもひまりには他の学生たちのように青春を謳歌する余裕などとてもなかった。


 とにかく勉強すること。


 勉強するための環境を整えること。


 また、それだけではなく、基本的なことだが、自分を食べさせなければならないのだ。




 「ホント、そんなんじゃないから、心配しないで」

 「武藤ッチぃ」

 「今は、まあ、ちょっと事情があってお世話になってるだけなの。詳しくは話せないんだけど、本当に、むらちゃんに心配してもってるようなことじゃないから」




 そこまで言えば小さな子供のことではないので、それ以上は美紀にしても踏み込んでは来ない。




 「それなら…まあ、いいけど」

 「でも、心配してれて、ありがとう」




 彼女の友情と好意が嬉しい。


 そんなひまりの気持ちが通じたのだろう。


 難しい顔をしていた美紀も優しく笑ってくれる。




 「でもね、くれぐれも避妊だけは気をつけるのよ」





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