パンプスとスニーカー
 隣にいる男=当然武尊のことだ。


 わりに真面目に勉強している方だとは言え、必ずしも大学に来なければならないわけではないから、武尊にしても壮太にしてもそれほど出席率がいいわけではなかった。


 それなのに、だ。


 ここ半月ほど、武尊の大学出没率は、鰻のぼりに上がっている。


 当然誰が原因なのかは言わずと知れていた…その当の誰か以外には。




 「最近、俺、東郷教授のお気に入りなんだぜ」

 「出席率いいから?」

 「そう、ほとんどあの人の授業って閑古鳥だもんな」

 「専門科目はそういう講座多いよね。仕方ないけど」

 「授業出てる暇あったら、司法試験目指して自習しろ、が普通だもんな」

 「ひまりちゃんも授業出てるより、一心不乱に受験勉強してた方が効率いいんじゃないの?」




 わいわいがやがや、いまやこれが日常の一コマだ。


 もちろん、美紀や以前の友人たちと一緒にいることも多いが、武尊や必然、彼とつるんでいる壮太と一緒することも少なくない。




 「…武藤?」

 「あ、松田君」




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