パンプスとスニーカー
 背後からかかった声に振り返る。


 松田に気がついた壮太も気安く声をかけた。


 「よ、まっちゃん」

 「まっちゃんはやめろ、藤宮」




 憮然とした顔は本当に嫌そうだ。


 別におかしな呼び名でもないと思うのに、‘マツ’はいいのに‘まっちゃん’は恥ずかしいのかと、そのこだわりがひまりなどにはイマイチよくわからない。


 …まあ、武尊も‘タケちゃん’はイヤだって言ってたしね。


 男は案外女よりもナイーブな生き物だという。


 とはいえ、松田の顔は気恥ずかしいというよりは、単純に不機嫌そうでその不機嫌な理由がひまりには思い当たらない。


 元々松田も壮太ほどには、愛想がいい方ではなかった。


 しかし、ひまりやひまりの女友達と普通に交友する程度の社交性は普通にある男だったはずなのに。


 壮太はともかくとして、武尊と松田は完全にソリが合わないのか、チラッと視線を交わし合う程度で、ほとんど無視し合っている。




 「武藤飯食った?」

 「ううん、今から食べるところなの」

 「良かったら、一緒に外食しない?奢るから」




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