パンプスとスニーカー
 「…え」




 戸惑いつつも、それでもひまりも武尊の言葉を松田の誘いを断る口実にしてしまう。




 「えっと、その…そういうわけだから、ごめんね?」

 「…いいけど」




 松田にしてもひまりにハッキリと断りを入れられてしまえば、追いすがれない。


 ひまりではなく、松田は険しい顔で武尊を睨んでいた。


 応じる武尊も負けてはいない。


 間に挟まれるカタチになってしまったひまりが、緊迫した空気にオドオドと二人を見比べる。


 …ど、どうなってるの?


 が、




 「ひゅう~、青春だねぇ。これぞ若人!いいねぇ、もっとやれやれ~」




 壮太の無責任なヤジを契機に、二人の睨み合いが止んだ。




 「ふざけろ、壮太。…ひま、行こう」

 「あ、うん。じゃあ、またね、藤宮君、松田君」

 「ああ、武藤」

 「またねぇ。…しかし、人間こうも変わるとはね」




 武尊に手を握られ、半ば引っ立てられるよう歩くひまりの耳に、壮太の苦笑い混じりの呟きが妙に残った。




*****





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