パンプスとスニーカー
 「この辺、判例的には真新しいものじゃないけど、司法試験では繰り返し使われてる例題だし、こっちの書籍の方が実際的で即戦的だって」

 「へぇ?そうなんだ」




 角を挟んで向かい合わせというか、隣り合わせに座って、積み上げた分厚い本の横に差し出されたもう一冊。

 
 ついマジマジと見入ってしまっていたひまりに、武尊が首を傾げる。




 「えっと、もしかしてすでに一読済?んでもって、あんまり良くなかったかな?」

 「え?」

 「いや、俺はこれ、一昨年司法試験に現役合格して検事局入りした先輩に勧められて読んで、かなり良かったと思ったんだけどさ?」




 勤勉で優秀なひまりならば、かなり広範囲な参考資料には目を通してるだろうと武尊も思い当たる。


 しかし、武尊なりにひまりが持ち歩いている資料をチェックした上でのチョイスだったのだ。





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