パンプスとスニーカー
 「え?」

 「この前一緒にコーヒー飲んだ店にする?」

 「…いやぁ」




 懐具合を考えても、そうそう喫茶店になど入れるものではなかったけれど、それ以前に武尊にわざわざバイト先まで車で送ってもらうなど申し訳なさすぎる。




 「えっとね、電車で1駅くらいだし、武尊のマンションとは反対方向だから送ってくれなくても大丈夫だよ?」

 「車なら10分かからないよ?」
 
 「…まあ、そうだけど」




 電車の場合は駅まで徒歩だし、待ち時間もある。


 それにしても…だ。


 本当に彼女とかそういう関係ならともかくとして、こうして武尊の祖母や一佳たちの目のないところで、恋人よろしく一緒にいなければならない理由は何もない。


 …まあ、図書館で一緒に勉強するくらい友達の範囲でもやるけどさ。


 どういうつもりでいるのか、武尊という人間がわからなかった。


 返事を濁してひまりが言葉に困っているうちに、さっさと身の回りのものを片付け、ひまりの荷物にまで手をかけた武尊がすでに立ち上がっている。




 「行こっか」




*****





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