パンプスとスニーカー
 「……うん」




 それもどうしようもなくなれば、頼ることもあるかもしれないが、あまり迷惑をかけられるものでもない。


 なるべく暗くなりたくなかったから、先行きは考えないようにはしていたけれど、本当に五里霧中。


 食べ終わった食事のトレイを避けて、テーブルに懐く。




 「実家に電話したら?」

 「うーん」




 それが一番無難なことであることは、ひまりもわかっている。




 「いくらなんでも2年生にもなって、大学辞めて戻って来いはないんじゃないの?」

 「それは、たぶん」




 親の反対を押し切って東京に出てきた。


 高校を出た後はせいぜい地元の短大か専門学校でも出て、普通のOLか地方公務員になって結婚して…、そんなひまりの未来を勝手に思い描いていた父親は、当然ひまりの進学に協力してくれるはずもなかった。


 …そうじゃなくっても、仕送りしてもらうなんて、とても言い出せる家計状況じゃないし。


 ひまりの実家はごく普通の兼業農家というやつで、特別に貧しいとかそんなわけでもなかったけれど、下にまだ高校生の弟が二人いるし、兄夫婦がすでに家に入っているだけに遠慮せざるえないこともある。


 それでもたぶん他人である友人たちに迷惑をかけるよりは、兄なり兄嫁なりに頭を下げて、お金を借りるのが順当なのだとはわかっていたけれど。


 …おじいちゃんに頼んでみるかな。


 思案のしどころではある。




 「親に頼った方がいいんじゃないの?」

 「お父さんとは絶縁状態だからさ」





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