パンプスとスニーカー
 「…そっか」




 実はそう言われるのも初めてではない。


 小学生の頃から父子家庭で、家庭内で唯一の女の子だったひまりが、一家の主婦役を担うことも珍しくなくって、そんなところが周囲から浮く原因になることもあった。


 幸い性格的に卑屈な方ではなかったので、それなりに上手くはやっていけてはいたけれど、やはり付き合いは悪いと思われていたのだろう。




 「まだ武藤ッチとは1年にも満たない付き合いだけどさ。図々しい人間も多いっていうのに、謙虚っていうか、一生懸命っていうかね」

 「…へ?って、うわっ」




 いきなり覆い被さるように抱きつかれて、悲鳴を上げる。




 「可愛いぞ!武藤ッチ!!」

 「ええっ!?」

 「可愛がって遣わすっ」

 「は?はははは…」




 ひまりの方が苦笑してしまう。


 美紀の言動は新鮮というか、なかなかに新しい展開だ。


 ひまりもこの新しい友達の意外な言動に、戸惑うことも多いが嫌いではなかった。


 …意外な人っているよね、ホント。


 見た目や一見だけで他人を嫌ったり、疎んじたりするのは本当にもったいないことだとこういう時に思う。


 一見すれば、いかにも今時の女子大生風で、軽い見た目の美紀だったが、勉強は真面目だし、人間的にも生真面目で誠実な子だ。


 また他人を偏見の目で見たりしないから、人嫌いをしない。


 何よりも、優しかった。


 …むらちゃんと友達になれて良かった。




 「…なに、女同士レズってんだよ?」





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