パンプスとスニーカー
 呆れた声音に顔を向ければ、やはり同期の松田が声音通りの顔で二人を見下ろしていた。




 「お、マツ」

 「松田君」




 勝手知ったる…で、二人の間、空いてる席に腰を下ろしてしまう。




 「珍しいね、マツが昼からだなんて」

 「ちょっとヤボ用で実家からだから」

 「ああ、埼玉だっけ?」

 「……千葉」




 松田もひまり同様、大学の近くで一人暮らしをしていたが、実家も通学圏内だ。




 「それより、武藤、なんかあったの?」

 「え?」




 突然問いかけられて、ひまりがキョトンと松田を見返す。


 それに顎をしゃくって、あらためてひまりをジロジロと見回しては、わずかに頬を染めているのが中々に挙動不審だった。


 少し、ムッとしてもいるようで、ひまりにしてみれば内心、首を傾げてしまう。

 
 何かムッとされることでもしたかと、目で美紀に尋ねれば、ニヤニヤ笑うだけで教えてくれずに松田の察しの良さを褒めた。




 「鋭いね、松田」

 「今日の講義、それほど資料も多くないやつなのに、昨日と同じくいつものトートバック持ってきてるだろ?」

 「…ああ」




 本当に鋭い。


 …さすが、未来の検事。


 ひまりも思わず感心してしまった。




 「なんかこうして見ると、服装も昨日のままみたいだし……もしかして、武藤、その、ど、どっか、お、お、お泊りした?」




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